気分障害の長期予後

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昔の躁鬱病うつ病は、今は気分障害と言われて、精神病じゃないんだそうである。で、その気分障害うつ病は今や治癒する病気になった、と喧伝されている。治癒するようになったのは、しかし、別に、新しい治療法が発見された訳ではなくて、治癒しない障害を精神病と定義して、気分障害は「精神病じゃない」と定義したんだから、気分障害は治癒する、というのは定義から演繹可能である。しかし、現実的には(少なくても僕の外来にくる患者の)気分障害者は経過を追うに従って、治らない人が多くなってゆくのである。↑の図は、10年以上フォローした躁鬱病患者44人の平均的な人生の経過図である。初発、第1回再発までは回復し、治癒すると言っても良いが、その後再発を繰り返す度に生活機能は低下し、現在におけるGAF(全体的な生活機能の評価尺度、100点が満点)の平均は75であるが、障害ありは70未満とすると、50%、22人が障害を残していることになる。仕事をしている人は5人しかいない。再発は平均5.3回で、4年に1回の割合であった。D(うつ)から始まる人が多く、M(躁)から始まる人は40%であった。
ー自殺云々のコメントは一般的な傾向で、僕のデータに自殺者は入れてないー
 躁状態のない、うつ病患者で10年以上フォローした45人は、GAF平均は69で、障害ありは実に80%、36人で、仕事をしている人は3人。再発は2.4回で、8年に1回の割合であった。
 気分障害、経過を追えば、立派な精神病なのであります。ちなみに10年以上フォローした統合失調症患者436人の障害ありは、76%でありました。