絆が切れた時

 50歳♂躁鬱病のIさんは父認知症→骨折→肺炎)の死亡後1か月で躁状態で再発し入院した。60歳♀統合失調症のKさんは夫(肺がん→手術)の死亡後2週間で幻覚妄想状態で再発し入院。Iさんの父もKさんの夫も実に面倒見の良い人で、本人たちがかなり調子を崩した時も、何とか入院せずに、と頑張ってくれていた。2人とも予想された死で、十分心の準備は出来ていたハズだったのに、周りも本人も、死んだ人の為にも調子を崩さないように努力はしたけど、結局ダメ。で、入院後は、「父なり夫なりの死を深刻に悩んでいるんだろう」と思ったら大違いで、Iさんは若い女性看護師を追いかけ保護室に入ってしまったし、Kさんは“結婚してくれ”の幻聴に聞き入ってにかにかしているのだ。まあ、葬式躁病(躁的防衛)という言い訳もあるんだろうけど、でも、「死んだ2人が見たら、実に情けないと思うだろう」と考えたら、かなり辛くなってしまった。さらに今週、47歳♂躁鬱病のSさん躁状態で入院したが、彼もまた、父の死後1週間だった。自営業の手伝いをさせるなど面倒見の良い父であったが、当の本人は、今日も「父はウルサイだけだった。父が可哀そうだから、俺は働いてやっていたんだ」と威張っているのであった。