精神保健法の改正

 今回の精神医療保健法の改正については、マスコミでは色々言われているが、現場の実態は変わらないと思う。最近20年で法律内容は色々変わったけど、書類が増えただけで、現場でやってる事は全く同じと思う。幾ら入院が必要でも病院が満床なら入れれないし、病院に誰が連れてくるか(移送問題)も変化はないし、スタッフはいつも足りない。以前も書いた(医療保護入院は怪しい)けど、入院判断基準は科学的ではない。本人が書類にサイン出来れば任意入院だし、医者は周囲の意見を聞いて、常識的に判断するだけだ。欧米の法律では強制的な処遇が可能なのは「自傷他害の恐れが切迫している」場合だけであり、つまり、「医療保護入院」などという概念はハナからない。それでも例えばWHOでも、医療保護入院を人権侵害とは認めていないのは、非西洋諸国では家族強制の隔離や拘束が当然と思われているからであろう。
 日本は先進国と言われているが、人権的には他のアジアの国とそんなに変わらないと思う。精神障害者の人権を国が本気で守る積りがあるのなら、先ず精神科病院の環境を欧米並みにレベルアップして貰いたい。・・・つまり「僕達の給料を上げろってこと!」と医局の同僚は言う。誰も信じてくれないけど、僕ら指定医(この法律に従って業務を行う医者)は無報酬でこの法律をサポートしているのだけれど、それについての報酬の話はこの20年全く聞かないのであります。患者の人権が第一ってのは分かってますが…。