親の病気、子知らず

 Nさん56歳女、夫が死亡後3か月。「様子がおかしい」と親戚に連れて来られて初診。支離滅裂でそのまま入院。どうも長年の統合失調症のようなのだが、「親族も、近所の人も、おまけに子供(30歳男)までが「今までは何でもなかった」と言うのが不審だ」と担当の若いM先生は言っていた。その全容が判明したのは2年後。患者本人が、「実は結婚直後同じ様な事が有って、ダンナが何処かから薬を調達してきていて、それをずっと飲んでいた。ダンナが死んで薬がなくなって、で、今回の事が起こった。ダンナが他人にはナイショにしろ、と言うので今迄誰にも言わなかった」と自白したらしい。M先生は僕がその時どうして「長年の」と分かったのか不思議がっていたが、だって、56歳初発は有り得ないでしょう。それに、親の精神病は子供には分からないものなのだ。若い先生にちょっぴり見直されたようで、少し嬉しくなりました。年上の同僚はおだてて使うのがコツですよ。