リーバーマンVSウィタカー

アメリカ精神医学会(APA)の会長ジェフレイ・リーバーマン(The Shrinks-The Untold Story of Psychiatryの著者)と、精神疾患に安易に薬を使う事に反対する現代の反精神医学の旗手ロバート・ウィタカー(mad in america主催、心の病の「流行」と精神科治療薬の真実 の著者)の論争がヒートアップしているようだ。リーバーマンがラジオで「ウィタカーは社会の迷惑」、「薬物が患者に恩恵をもたらしているのは明らか」と吐き捨てたのに対し、ウィタカーは自身のブログで、「非・薬物療法に比し薬物療法患者の長期予後に有効のエビデンスはないハズ、あるなら教えてくれ」、「“社会の迷惑”は自分の墓標にする」と噛みついた。
 精神疾患薬はホントに効いているのか? 再発予防、暴力予防、など短期的な効果は別にすると、確かにウィタカーの言うようにクリアカットなエビデンスはない。でもそれはウィタカーの言うように、だから患者の役に立っていない、と言う事ではなく、多分患者の選び方やデータの取り方や判定の仕方の問題であろうと思う。酒は毒なのか薬なのか、とか、解熱剤はホントに風邪に有効なのか、という議論に似ていると思う。
 精神科はエビデンスでは動かない。てんかん胃潰瘍など、薬だけで治せるようになった病気は、内科に移ってゆく。エビデンスを言うならポイントはプラセボ効果だ。精神科医薬と一緒に希望を処方している。薬で患者をエンパワーするのだ。現場を見る記者さんたちは、その現場の悲惨さにウロタエて、医者の悪口を言いたがるけど、悲惨なのはその病気のせいなのだ。ウィタカーさんは是非とも心を大きくもってもらってリーバーマン仲直りしてもらって、患者に希望を与える事に協力してほしい。患者は“薬では治らない”のではなくて、“薬だけでは治らない”のだ。