転勤難民

 毎年この時期外来が少し荒れる。医局派遣の医師が移動すると、残された患者の中には新しい医師との関係がうまく行かなくなって、所謂ドクターショッピングを始める患者が出てくる。僕は密かにこの患者達を難民と呼んでいる。今年は常勤医が2人も移動したので、難民が2ケタ出現した。そのまま院外に流れて行ってくれる人は数人で、多くは院内医師の品定めを始めた。彼ら彼女らは、いかに今迄の医師が立派だったかを言い立て、残った医師のいかにレベルが低いかを吹聴する。昔は悔しい気持ちもあって気合を入れて対処しようとしたこともあったけど、かえって患者と医者の上げ足とりのようなことになり、大抵うまくいかなかった。難民患者さんには、転勤という事実を受け入れてもらって、もっと前向きに人生に取り組んでもらいたい、と思うのですが、先ず通じない。溺れてる人を助けようと1人で飛び込むと一緒に溺れてしまうのですね。で、この頃は、誰かの代診に出る時のように、その場限りのような診察を心がけるようにしている。それで患者がどう思うかは分からないが、僕のほうは大分気が楽になって、この時期をすごせるようになっている。良い悪いではなくて、患者ー医師には相性がある。相性が悪ければその悪い原因(転移・逆転移)を追及するよりきっぱり分かれた方が良いと思う。こっちが下手に難民に手を差し伸べよう、などと一念発起すると碌な事にはならないようです。