スーパーサバイバーの話

 現在は会社重役をしている統合失調症55歳の人(当院通院歴25年で途中再発・再入院なし。ここ数年僕が診ている)に、病気との付き合い方の秘訣を聞いて見て、彼が話し始めてびっくりした。先ず、病識が全くない。彼は、自分は精神病ではないと信じていた。初発で入院させられたのは「闇の大王」の手下の医者に騙されたせいで、服薬・通院しないとその大王の仲間が脅かしにくるので、しかたなしに飲んでたら、そのうちに飲まないと寝れない身体に変えられてしまったので、仕方なしに飲んでいるのだという。さらに、「薬は毒だから適当に減らして飲んでいる」とか「医者は皆大王の仲間だから本当の事は言わないようにしている」とか言いだし、幻聴も残っている事が判明した。僕がこれ以上話をさせるのが不安になった時、最後に彼は、「だから、秘訣は“自分の事は自分でやる事”ですね」と言って唐突に話が止まった。つまり彼は、現在も幻覚妄想状態で支離滅裂なのであったがなぜか社会的適応には全く問題がないようなのでありました。こんな患者初めてだけど、黙ってるから分からないだけで、ホントは結構大勢いるんだろうな、と思い返しました。結論は合っているしね。